ひみつのコラム|ツダマサコ

ガルシア・ロルカ悲劇三部作第3章「血の婚礼」は、悲劇と書いて「ひみつ」と読みます。

血の婚礼のキャスト・スタッフによる「悲劇・ひみつ」をテーマにしたコラムを書いてもらいました。

あなたのひみつを呼び覚ますような読み物です。ぜひお楽しみに。


「声の記憶10の文字」

17歳の秋から冬のふたつきの間ボーイフレンドがいた。日曜の昼下がりに電話が鳴る。
「雨だし寒いからお客さんが来ない。」と話す彼は週末、動物園の遊園地にある食堂でアルバイトをしていた。話すのは主に彼で、私はいつも受話器の向こうの景色を考える。雨の食堂の薄暗い店内や湿ったコンクリの匂い。
濡れた観覧車やらをぼんやり想像しているうちにコイン切れの予告音がし、まもなく電話は切れるのだ。動物園はもうずいぶん古びて、頭に浮かぶ景色も全てが雨にくすみ誰もいない。時折マレー熊の悲しい爪音が遠く聞こえるような気がした。そんな時間に突然終わりがくる。土曜日の夜の電話。陽気な彼と後輩達。私は戸惑いひどく苛立った。そして思わず言わなくて良い秘密を口にしてしまう。たった10の文字。  私は彼の名前も顔もなぜ話すようになったかさえ何も覚えがない。美術部の部長だと話した彼は、私の絵を描いただろうか。それもまた私ではなく違う誰かの

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