山田恵理香の敬愛する演出家の和田喜夫が、血の婚礼のドラマトゥルクを担当します。

※ドラマトゥルク:公演の創作現場において生じるあらゆる知的作業のサポート・助言・調整・相談役などの役割を果たす。

今回、二人がメールで行なったやり取りを一部公開します!
血の婚礼がどのように創作されてきたのかを想像してお楽しみください。


和田喜夫

1951年山口県下関生まれ。早稲田大学在中より演出を始める。
1982年から11年間、劇作家・岸田理生との共同作業を続け、92年オーストラリアのアデレード国際演劇祭で『糸地獄』を上演。
01年よりオーストラリアやカナダの先住民の劇作家との共同作業を始める。また「在日」の演劇人との共同作業も多い。『居留地姉妹』『ウィンドミル・ベイビー』など。
演劇企画集団楽天団代表。日本演出者協会事務局長。


和田さん
お疲れ様です。

さて、血の婚礼のチラシを入稿します。
添付してますが、「ドラマトゥルク 和田喜夫(劇団楽天団)」で記載してます。
基本的には、公演後にオンラインでトークする会を予定しますので、それに主にご参加願います。
この日程とか分かったら制作からでも連絡が行くと思います。
それまでは、ご相談したいこととかでたらまたご連絡します。

本番を見にきてもらえたら〜とおもってますが、、どうでしょね。
また近づいた時の様子で、判断できればです。
もしもの時は動画みてください。

山田恵理香さま

おはようございます。
福岡もコロナで大変ですが、
稽古はいかがですか?

また連絡しますね。

和田さんへ

お返事ありがとうございます。
マスクをつけて、狭い会場では人数制限をして、いけるときは外で稽古して、気をつけながら進めています。
先週あたりでようやくフルキャスト決まって、座組みがみえてきました。
みな、よく思考してくれる思い切りのあるパフォーマーの人たちが揃いました。
俳優が少なくて、ダンサーが多めです。

さて、創作のことで少し相談があります。
和田さんは血の婚礼という作品についてどのように思っていますか?
いま、私は、この作品は追い詰められた人たちの話だととらえようとして進んでいます。
社会の目とか世間の目とかを作品に感じるのです。
村の因習により若者たちが追い詰められた結果の結末とおもってます。

血の婚礼の脚本はお持ちと思いますが、長南実さんの翻訳をベースに進めようと思っているところです。
一応、脚本と添付します。

和田さんへ

お疲れ様です。
今日、血の婚礼の顔あわせと下見が公園でありまする。
よかったら血の婚礼に関する思いとか、野外公演やコロナ禍での演劇活動についてなど
なにか一言メッセージをいただけないでしょうか?

山田恵理香さま

きちんと整理できませんが、
野外劇『血の婚礼』への私の思いというか、
演劇への思いを書きます。

コロナ禍において演劇に関わる人間は、若手も長い経験を持つ人も
等しく、演劇のあり方について根本的に問われていると思います。

私自身も考え続けていますが、今強く思うことは、演劇はもっと社会に発信するもの、
演劇らしさ、演技らしさから自由になり、
無邪気に全身で出会う場をつくる必要があると感じています。

『血の婚礼』は悲劇と言われ、不安や恐れや哀しみが多く描かれていますが
人間の生命へのあこがれや
出逢いの嬉しさが観に来てくださる人と
共有できる場になるといいなあ、と
野外劇の好きな私は思っています。

言葉足らずですみません。

和田さんへ

お疲れ様です。こないだこがきょにあって、チラシもらいましたよ。
オンラインで稽古してると聞いております。
本番は、これまたダンスの野外公演とかぶっててみれないかもですが、
ゲネプロとか稽古みせてもらおうかな〜っておもってます。
(和田喜夫演出作品「いきたひと」のこと。詳細はこちら

緊急事態が解除されましたが、やっぱり来年くらいまでは
コロナのことの収束はなさそうですね。
というわけで、和田さんは引き続き下関でしょうか?

血の婚礼の方ですが、2日に公開稽古します。
その日しかフル出演者が昼間に揃わないので、
舞鶴公園を歩いて繋いでみて通して見る感じです。
映像とかときどきシェアしますね。

和田さんが福岡に来る選択肢はないだろうと思ってますが、ですよね?
念の為確認せよ、と猛者に言われました。

さて、相談があります。
血の婚礼の、第三幕の第二場で少女が

♬糸玉糸玉なにになるの?
 ジャスミンの花のブローチ
 ガラスみたいに繊細な糸
 4時に生まれて
 10時には死ぬ

と、糸を巻きながらしゃべるというか歌うというかみたいな場面があるのです。
この、「♬4時に生まれて10時には死ぬ」というのが、
初期からずっとメンバーで話しても調べてもわからなくて。。。
和田さんのご意見ってありますか?
キリストがらみか。
女は4時に起きてだれよりも早く仕事して、10時には寝るみたいなことか?
とか、いろいろ意見があるけども、、いまいちわからなくて。

そうだ!和田さんに聞いてみようっていう。
余力あったら電話で聴きたいくらいです。
こうしてときどき質問を投げますね。

山田恵理香さま

フル出演者を集めるのは大変なんですね。
今もずっと下関ですが福岡へは残念だけど行けない感じです。

血の婚礼の第三幕二場の部分ですが、
女性の命というか乙女の、花嫁のはなやぎの
時の短さ、儚さへの思いを言っているように感じます。
「♬4時に生まれて10時に死ぬ」の前に
ジャスミンの花が出ていて
ジャスミンの花は夜に咲いて
お昼には花が落ちる
香り豊かな花の命も短い・・
ガラスの糸も儚さのつながりかな、
と思います。

僕の感想なので
専門家が見つかったら訊いてみますね。

稽古の映像など観ることが
できたら嬉しいです。

山田恵理香さま

稽古は順調ですか。
今日、王丸さんから
稽古動画、第三幕一場の一部を受け取りました。
石垣の上の月、大変そうですね。

一つ気になったのが、
月の台詞で「血がこの指で、妙なる口笛吹くように」かな、
「妙なる」を「たえなる」でなく「みょうなる」と発語しているようですが・・
すみません。全体が解っていないのに、気になったので。

和田さん

お疲れ様です!
昨日は稽古のあとにワクチン接種にいってて、
お返事遅くなりました。

映像みてもらってよかったです。
「たえなる」ですね!!声は音楽の男の子がやっているのですが、読み間違えているです。
録音にする予定なので、よかったです。

月と木こりと死神は人間ではないものととらえて表現します。
月は声を持たずに外側の人の声にしようとなってるので、
音楽の男の子がまもなく録音するのであぶなかった〜〜。

稽古の映像はどれがシェアされたかわからないですが、
外の月のやつみてもらえてよかったです。

そして!!!
ジャスミンのところ。
私もジャスミンの花の命の短さかな〜、、と迷っていましたが、
和田さんからのご意見をきけて本当によかったです。
少女役の人たちも振付家もうちのメンバーもみんな気になってた人たちが
手応えをもって腑に落ちました。

また、何気なことでもご連絡させてください。

明日は、朝から夜まで公園で場面をつないでいって、
15時30分〜17時30分は公開稽古となってます。
映像をまたとりますので、シェアさせてください。

昨日、メンバーとシェアした演出プランのテキストを送ります。
引き続きよろしくお願いします。